GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、どちらもインクレチンに関わる糖尿病治療薬です。
ただし、作用する経路が重なるため、併用による上乗せ効果は限定的と考えられることがあり、医師の判断なしに一緒に使うべきではありません。
日本糖尿病学会の資料では、DPP-4阻害薬はGIPやGLP-1の活性を生理学的濃度の範囲内で高める薬、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は薬理学的レベルで作用する薬とされています。参考:一般社団法人 日本糖尿病学会|インクレチン関連薬の安全な使用に関するRecommendation
また、インクレチン関連薬では、低血糖が危惧される薬剤との併用、膵疾患、胆道系疾患などにも注意が必要です。
この記事では、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の違い、併用が推奨されにくい理由、注意すべきリスク、服用中の薬がある場合に確認すべきことをわかりやすく解説します。
※GLP-1ダイエットに用いられるオゼンピック/ウゴービ・マンジャロ/ゼップバウンドには、下記のような副作用があります
主な副作用:悪心・嘔吐、下痢、便秘、腹痛、めまい、頭痛、腹部不快感など
重大な副作用:低血糖、急性すい炎、胆のう炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸など

GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の違い
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、どちらもインクレチンという仕組みに関わる糖尿病治療薬です。参考:日本内科学会 インクレチン関連薬
インクレチンとは食事をしたときに小腸などから分泌され、インスリン分泌を促すホルモンの総称です。代表的なものに、GLP-1やGIPがあります。
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、どちらもインクレチン関連薬に分類されます。ただし、作用機序(薬の働き方)には違いがあります。
| 比較項目 | GLP-1受容体作動薬 | DPP-4阻害薬 |
|---|---|---|
| 作用の仕組み | GLP-1受容体に直接作用する | GLP-1やGIPの分解を抑える |
| 作用の強さ | 薬理学的にGLP-1作用を高める | 体内のインクレチンを生理的範囲で高める |
| 主な薬剤 |
|
|
| 剤形 | 注射薬・飲み薬 | 飲み薬 |
| 胃排出・食欲への影響 | 影響する場合がある | 影響は比較的限定的 |
どちらも血糖値に関わる薬ですが、同じ目的で使うからといって自己判断で併用してよいわけではありません。
すでにDPP-4阻害薬を服用している人がGLP-1受容体作動薬の使用を検討する場合は、現在の治療内容や血糖値、他の薬との組み合わせを含めて必ず医師に相談しましょう。
GLP-1受容体作動薬とは|マンジャロやリベルサスなど
マンジャロやリベルサスなどのGLP-1受容体作動薬は体内のGLP-1と似た働きをするようにつくられた薬です。
(マンジャロはGLP-1とGIPという2つのホルモン受容体を同時に刺激するデュアル(二重)作用)
GLP-1受容体に作用することで、血糖値が高いときにインスリン分泌を促し血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑えます。
また、胃の内容物の排出をゆるやかにしたり、食欲に関わったりする作用もあります。
主な特徴は下記の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | インクレチン関連薬 |
| 主な作用 | インスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、胃排出遅延など |
| 主な薬剤 |
|
| 使用目的 | 主に2型糖尿病の血糖管理 |
| 剤形 | 注射薬、飲み薬など |
DPP-4阻害薬とは|ジャヌビア、グラクティブ、トラゼンタなど
ジャヌビア、グラクティブ、トラゼンタなどのDPP-4阻害薬は、体内で分泌されたGLP-1やGIPなどのインクレチンが分解されるのを抑える薬です。
GLP-1やGIPは、DPP-4という酵素によって分解されます。DPP-4阻害薬はこの酵素の働きを抑えることで、体内にあるインクレチンの働きを長く保ち、血糖値のコントロールを助けます。
主な特徴は以下です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | インクレチン関連薬 |
| 主な作用 | DPP-4を阻害し、内因性インクレチンの働きを高める |
| 主な薬剤 |
|
| 使用目的 | 2型糖尿病の血糖管理 |
| 剤形 | 飲み薬 |
DPP-4阻害薬は飲み薬として使われることが多く、2型糖尿病治療で広く用いられています。ただし、他の糖尿病治療薬と組み合わせる場合は低血糖などに注意が必要です。
GLP-1とDPP-4阻害薬は併用できる?
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、どちらもインクレチンに関わる薬です。
作用が一部重なることから、医療の現場でも「併用しても効果が大きく上乗せされにくい」と考えられることが多いです。
「似た働きの薬を一緒に使えば効果が強くなる」と自己判断するのは避けましょう。
併用は原則として適用されない
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、どちらもGLP-1の働きに関係します。
DPP-4阻害薬は、体内で分泌されたGLP-1が分解されるのを抑える薬で、GLP-1受容体作動薬はGLP-1受容体に直接作用する薬です。
つまり、どちらも最終的にはGLP-1に関わる経路を利用するため、作用が重なります。
そのため、併用しても期待したほど効果が上乗せされないことがあり、治療上のメリットが限定的と判断されることが多いです。参考:日本糖尿病学会糖 尿病治療ガイド、DPP-4 阻害薬とGLP-1 受容体作動薬の適切な使い分け
血糖値をよりよく管理したい場合でもDPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を自己判断で併用するのは避けてください。医師が現在の血糖状態や他の薬との組み合わせを見ながら治療方針を決めます。
医師の判断なしに併用するのはNG
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、医師の判断なしに併用しないようにしましょう。
糖尿病治療薬は、血糖値・HbA1c(ヘモグロビン数値)・合併症・腎機能・肝機能・年齢・食事量・低血糖リスクなどを踏まえて組み合わせが決められます。
そのため、「今飲んでいる薬にGLP-1を追加すればよさそう」と自己判断するのは危険です。
特に注意が必要なのは、以下のようなケースです。
- DPP-4阻害薬をすでに服用している
- インスリンやSU薬を使っている
- 複数の糖尿病薬を併用している
- 腎機能や肝機能に不安がある
- 食事量が大きく減っている
併用の可否は薬の名前だけで判断できるものではありません。
お薬手帳や現在服用している薬の情報を医師に伝え、必要に応じて治療内容を見直してもらいましょう。
GLP-1とDPP-4服用の際に注意したいリスク
GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、どちらも血糖値に関わる薬です。
そのため、併用を検討する場合は効果だけでなく副作用や低血糖リスク、他の糖尿病薬との組み合わせにも注意する必要があります。
特にインスリン製剤やSU薬などを使用している場合は血糖値が下がりすぎる可能性があるため、医師の管理のもとで慎重に判断することが大切です。
低血糖リスク
GLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害薬は、単独では低血糖を起こしにくいとされます。
しかし、インスリン製剤やSU薬など血糖値を下げる作用が強い薬と併用している場合は、低血糖に注意が必要です。
低血糖では、以下のような症状が出ることがあります。
| 主な症状 | 具体例 |
|---|---|
| 自律神経症状 | 冷や汗、動悸、手のふるえ、強い空腹感 |
| 中枢神経症状 | 頭痛、めまい、ぼーっとする、集中しにくい |
| 重い症状 | 意識がもうろうとする、けいれん、意識消失 |
食事量が急に減っている場合や体調不良で食べられない場合も、低血糖のリスクが高まることも。
糖尿病治療薬を使用している人は低血糖時の対応方法をあらかじめ医師や薬剤師に確認しておきましょう。
消化器系の症状
GLP-1受容体作動薬では、吐き気・嘔吐・下痢・便秘・胃もたれなどの消化器症状が起こることがあります。
DPP-4阻害薬と併用することで必ず消化器症状が強くなるとは限りませんが、複数の薬を使用している場合、体調変化が出たときにどの薬が関係しているのか判断しにくいでしょう。
特に、以下のような症状がある場合は注意しましょう。
- 吐き気が強い
- 嘔吐を繰り返す
- 下痢が続く
- 便秘が悪化する
- 強い腹痛がある
軽い胃もたれや吐き気であっても長引く場合や日常生活に支障がある場合は、自己判断で我慢せず医師に相談しましょう。
他の糖尿病薬と組み合わせた時のリスク
糖尿病治療では、GLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害薬以外にも、さまざまな薬が使われます。
- インスリン製剤
- SU薬
- SGLT2阻害薬
- ビグアナイド薬
- チアゾリジン薬
例えば上記のような治療薬は、患者の血糖値、HbA1c(ヘモグロビン数値)、体重、低血糖リスクなどを踏まえて組み合わせが決められます。
そのため、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬だけでなく、他の薬も含めて全体の治療内容を確認することが大切です。
DPP-4からGLP-1への切り替えは医師に相談しよう
すでにDPP-4阻害薬を服用している人がGLP-1受容体作動薬を使う場合、医師の判断でDPP-4阻害薬を中止したり、別の治療薬へ切り替えたりすることがあります。
薬の切り替えは、より高い治療効果や減量効果を期待できる有効な選択肢ですが、患者自身の体質、現在の血糖値、他のお薬との相性を総合的に見て医師が判断するものです。
早く効果を出したいからと自己判断でお薬を調節したり、個人輸入などで手に入れたものを自己判断で切り替えたりすることは、予期せぬ健康被害や重篤な副作用を招くため絶対に避けてください。
切り替えは、現在のお薬手帳を必ず持参し、主治医の先生に「血糖コントロールや体重について相談したい」と直接伝えることから始めましょう。
GLP-1とDPP-4処方で服用中の薬がある場合に確認すべきこと
GLP-1とDPP-4処方で服用中の薬がある場合に確認すべきことを整理しました。
現在、DPP-4阻害薬を服用中の方が、リベルサスやマンジャロなどGLP-1受容体作動薬への切り替えや追加を検討される際にも気をつけたいことと共通しています。
服用・使用中の薬の名前を医師に伝える
受診時には、現在使っている薬の名前を医師に正確に伝えることが大切です。
糖尿病治療薬には、GLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害薬のほかにも、インスリン製剤、SU薬、SGLT2阻害薬、ビグアナイド薬などさまざまな種類があります。
薬の種類によって、低血糖リスクや副作用、用量調整の必要性が変わるので、忘れずに共有しましょう。
- 薬の名前
- 使用用量
- 服用回数
- 使用開始時期
- 飲み忘れの頻度
- 副作用の有無
「すでにダイエットのために薬を飲んでいます」と伝えるだけでは、正確な判断が難しい場合があります。
薬の名前や用量がわからない場合は、次に紹介するお薬手帳を活用しましょう。
お薬手帳を持参する
服用中の薬がある場合は、受診時にお薬手帳を持参しましょう。
お薬手帳には、処方されている薬の名前、用量、服用回数、処方日などが記録されている記録用の手帳です。
医師や薬剤師が薬の組み合わせを確認しやすくなるため、低血糖や副作用、重複処方を防ぐうえで役立ちます。
特に、複数の医療機関を受診している人は注意が必要です。内科、皮膚科、婦人科、整形外科などで別々に薬をもらっている場合、すべての薬を把握できていないことがあるため注意してください。
また、服用しているオンライン処方薬、市販薬、サプリメント、漢方薬なども整理しておくのがおすすめ。
ダイエット系の健康食品を服用している場合も、必ず医師に共有しましょう。
自己判断で中止・追加しない
GLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害薬を使用している場合、自己判断で薬を中止したり、追加したりしないようにしましょう。
たとえば、以下のような行動は避けるべきです。
- DPP-4阻害薬を飲んだままGLP-1を追加する
- GLP-1を始めたから他の薬を勝手にやめる
- 血糖値が下がった気がして薬を減らす
- 自己判断で用量を増やす
- 余っている薬を自己判断で使う
糖尿病治療薬の調整は、血糖値やHbA1c、体重、腎機能、肝機能、食事量、低血糖の有無などを見ながら行います。
薬を変更したい場合や、効果・副作用が気になる場合は、自己判断せず医師に相談しましょう。
GLP-1とDPP-4の併用は保険が効く?
マンジャロとGLP-1受容体作動薬の違いは?
同じ目的や同じ仕組みで動くお薬を2つ同時に使うことは、医療費の過剰投与とみなされます。参考:社会保険診療報酬支払基金|経口血糖降下薬(2型糖尿病)の併用投与について
そのため、病院がこれらを同時に処方して保険請求を行っても、「原則として認められない・保険適用外」となり、処方自体がカットされるか、医療機関への診療報酬が削られる対象になります。
DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用ガイドラインとは?
医療経済的なルール(審査支払機関の規定)においても、この2つのグループは「同一種類の経口血糖降下薬」として括られており、原則として併用に保険は適用されません。
GLP-1とDPP-4阻害薬は同じ薬ですか?
GLP-1受容体作動薬はGLP-1受容体に直接作用する薬です。一方、DPP-4阻害薬は体内で分泌されたGLP-1やGIPなどのインクレチンが分解されるのを抑える薬です。
どちらも血糖値のコントロールに関わりますが、作用の仕組みや薬の種類、使い方は異なります。
すでにDPP-4阻害薬を服用している人がGLP-1受容体作動薬を検討する場合は、自己判断で追加せず医師に相談しましょう。
マンジャロとGLP-1受容体作動薬を一緒に使うと効果が強くなりますか?
どちらもインクレチンに関わる薬であり作用する経路が重なるため、併用しても効果の上乗せが限定的と考えられることがあります。
そのため、医師の判断でDPP-4阻害薬を中止したうえでGLP-1受容体作動薬へ切り替えるケースもあります。
血糖値をより下げたい、体重管理もしたいといった目的があっても、薬を増やせばよいというものではありません。
低血糖や消化器症状などのリスクも考慮する必要があるため、治療内容は医師と相談して決めましょう。
すでにDPP-4阻害薬を飲んでいる場合はどうすればいいですか?
受診時にはお薬手帳を持参し、服用中の薬の名前・用量・服用回数・使用開始時期を医師に伝えてください。
DPP-4阻害薬以外にもインスリン製剤やSU薬などを使用している場合は、低血糖リスクを含めて確認が必要です。
GLP-1受容体作動薬への切り替えや併用の可否は血糖値、HbA1c、体重、腎機能、肝機能、合併症、食事量、副作用の有無などを踏まえて医師が判断します。
薬を変更したい場合は、現在の治療状況を共有したうえで相談しましょう。
DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬は作用が異なる
DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、どちらも「インクレチン」という血糖値を調節するホルモンに関わるお薬ですが、その作用は異なります。
原則として併用はできないので注意しましょう。血糖値へのアプローチは違っても、最終的な効果は同じです。
2つを同時に使っても効果は重複して上乗せされないため、切り替える際はDPP-4阻害薬を中止します。
DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を取り入れる際は、自己判断での調節は絶対に避け、必ず医師の指導のもとで計画的に服用・減量を進めてください。
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